「包茎を手術したいけど、なんとなく怖い」
「どんなリスクが考えられるのか」
手術を受けるなんて不安だらけですよね。
結論から言うと包茎手術も手術なのでリスクは有ります。包茎手術は意外にも難しい手術です。ペニスは勃起によって形がかなり変化しますので、そこを想像して立体的にデザイン、手術する必要があるからです。
しかし『正しい手術方法』で『正しい手術後の管理』を行なえばリスクはそんなに高くありません。
『正しい手術方法』と記載したのは、包茎・美容クリニックを中心にリスクの高い手術方法(主には亀頭直下法)が横行しているからです。
そこで今回は日本泌尿器科学会認定の専門医の立場から
・包茎手術に関するリスク
・どの様にすればそのリスクを最小限に抑えられるのか
・『正しい手術方法』と『リスクの高い手術方法』
・『正しい術後の管理方法』
について分かりやすく解説させて頂きます。ぜひ参考にされて下さい!
目次
1. 包茎手術で起こりうる10のリスク
手術はメス、針を使う以上、リスクをゼロにすることは不可能です。そのリスクは手術方法によって発生率が大きく異なります。下記が包茎手術で考えられる代表的なリスクと手術法毎の発生率です。
なお包茎の手術方法に関しては別記事に詳しくご紹介していますので参考にされて下さい。
リスク1:痛み
手術を受けられた方の中で痛みが怖くて手術に踏み切れなかった、という声をよく頂きます。痛みをゼロにする事は出来ませんが、麻酔(ますい)方法を工夫する事で痛みを最大限取り除くことが出来ます。痛みを麻酔の痛み、手術中の痛み、手術後の痛みに分けて説明します。
麻酔の痛み
麻酔は注射薬なので注射する時に痛みが出ます。
手術中の痛み
手術前の麻酔がしっかりと効いていれば痛みを感じる事は有りません。
手術後の痛み
数日間は続きます。痛み止めをお渡ししますので通常時はさほど痛みはありませんが、特に勃起時(朝立ちなど)に引っ張られて痛みを感じます。次第に軽くなっていきますので心配要りません。日常生活は十分可能です。
なお包茎手術の痛みと緩和する方法に関しては別記事に詳しくまとめていますので是非参考にされて下さい。
リスク2:傷が目立つ
包茎手術を検討する際に『傷跡』が最も気になるという方は多いのではないでしょうか。手術をする以上傷跡はゼロには出来ませんが、手術方法で傷跡や手術したことのバレやすさは異なります。
【このリスクが起こりやすい手術方法】
亀頭直下切開法
亀頭のすぐ下で縫合しますので、下のイラストや写真(他院で手術し修正術希望で来院された方)の様に亀頭の色から陰茎の茶色に極端に移行する為、「手術したな」というのがバレバレです。亀頭とのツートンカラーです。また環状切開法と違いこのツートンカラーは時間が経っても改善しません。
通常の環状切開法
下のイラストの様に環状切開術で狭いところを切り取ることで、いつもペニスの皮の中に隠れている肌色の部分と外に出ていて茶色に色素沈着している部分を縫い合わせることで茶色と肌色の濃淡がはっきりしてしまい傷跡が目立ってしまいます(俗にいうツートンカラー)。
このツートンカラーは亀頭直下切開法のツートンカラーと違い時間が経てば改善しますが、約5〜10年程必要です。
バックカット(陰茎根部切開)法
下のイラストの様にペニスの根元の包皮を切るため陰毛に傷が隠れて目立ちにくい、という手術ですが、これは机上の空論です。例えばご自身の陰毛を見てもらえばわかりますが余程の多毛でない限り、陰毛の間から地肌が見えますよね?何となく陰毛があるから見えにくいという錯覚を利用しただけで、実際は隠毛の間から傷が目立ちます。
加えてペニスと陰毛部の皮膚の厚さは違いますので無理やり縫い合わせる事で段差になり、余計に傷が目立ちやすくなってしまいます。
クランプ法
クランプ法は下のイラストの様に機械を使って手術をするというもので、包茎手術をした事がない医師でも手術が出来る様に開発されたものです。包茎の専門家である泌尿器科では使いません。
ペニスの皮は前後、上下で厚み、長さも違いますし機械で単純に切除するだけでは残念ながら綺麗には仕上がりません。
リスク3:見た目が不自然
傷跡とは別に手術後、見た目が不自然で手術した事がバレやすいというリスクも有ります。これも手術法毎にリスクが異なります。
【このリスクが起こりやすい手術方法】
亀頭直下切開法
ペニスは伸び縮みしますが亀頭直下で縫合しており、この部分にはペニスの皮のたるみが有りませんので張力と言う無理な力がかかりケロイドになることがあります。写真は他院で手術し修正術希望で来院された方のものです(患者様から掲載のご許可を頂いております)。
バックカット法(陰茎根部切開法)
下のイラストの様にペニスと陰毛部の皮膚の間では緊張がかかる方向が違います。ペニスは体の軸に垂直の方向に伸び縮みしますがお腹に近い陰毛部の皮膚は体の軸に平行に緊張がかかるので傷が硬くなってなりやすく、ケロイドになり、さらに目立ってしまうのです。
糸と針による切らない包茎手術
下のイラストの様に余っている包皮(ペニスの皮)を糸で結んでペニスの根元に手繰り寄せる方法です。手軽な方法ですがペニスの根元に皮が集まってダブついていて不自然になってしまいます。
ヒアルロン酸による切らない包茎手術
亀頭にヒアルロン酸などの異物を入れて亀頭を大きくし、皮が被らない、戻らないようにするというものです。ヒアルロン酸であれば吸収されますが、その吸収は均一ではありません。吸収の過程で吸収されやすい場所、されにくい場所と差が出てきます。その差がデコボコとなり修正術の依頼も多いです(下記写真もその1例です)。また吸収されにくいだけならいいのですがヒアルロン酸はカプセル化し吸収されずしこりとして残ることもあります。
クランプ法
この手術法では機械でペニスの皮をかなり強い力で挟みますので、皮膚が挫滅(ざめつ)してしまう恐れがあり、ケロイドになってしまう恐れがあります。
背面切開法(縦切開横一文字法)
下のイラストの様に余っているペニスの皮を切り取らずに狭い部分に切り込みを入れる手術です。これから成長過程にある子供の包茎治療で活用される方法です。この手術方法ではペニスに1ヶ所だけ切り込みを入れるのでそこだけペニスの皮がダブついてしまいます。
リスク4:性感の低下
これは亀頭直下切開法特有のリスクです。亀頭直下で切ると、下のイラストにある様にその下にあるリジットバンドと言う部分を切ってしまう事になります。ここには解剖学的に多くの性感が集まると論文で報告されています。つまり亀頭直下法で手術を行うと性感が落ちてしまうのです。
※参考文献 Winkelmann RK: proceedings of the Mayo clinic, 34:39-47, 1959
Taylor JR: Br J Urol, 77:291-295, 1996
リスク5:腫れ
これはほぼ全例起こります。手術によってリンパ管、血液の循環(めぐり)が悪くなる為です。手術後1ヶ月(長くて3ヶ月)で自然に軽快しますので心配は要りません。
【このリスクが起こりやすい手術方法】
亀頭直下切開法
包茎手術では基本的に腫れは一時的ですが、その方のペニスの形に合わせて正しくデザインしないとずっと残る場合もありますので注意が必要です。
バックカット法
ペニスの根元で切っていますのでペニス全体、亀頭から根元まで1ヶ月程度かなり腫れます。
クランプ法
クランプ法では器械で無理やり包皮を切除していますので包皮へのダメージは大きくなってしまい、腫れも出やすくなります。
リスク6:亀頭の壊死(腐る)
これはヒアルロン酸などの異物注入による切らない包茎術特有のリスクです。ヒアルロン酸などの異物が血管の中に入ってしまうと塞栓(そくせん)を起こします。つまり血液の流れを塞いでしまうのです。そうすると血液の流れが止まってしまい栄養が行き渡らず腐ってしまうのです。ペニスは海綿体という血管の集合体で形成されていますので非常に危険です。
今年も千葉の美容クリニックで手術を受けた男性(この方はペニスを大きくする目的でヒアルロン酸を注入)が、塞栓による壊死が起こり(腐ってしまい)ペニスが一部しか残らず排尿困難となったとして提訴しました。(因みにこの様な訴訟は今年だけでも検索すれば他にもヒットします)
リスク7:包茎の悪化
糸と針で行う切らない包茎手術で起こりうるリスクです。通常、ペニスの伸び縮みに伴ってペニスの皮も伸び縮みします。しかし、この手術法ではペニスの皮を根元に集めて固定していますので勃起に伴い少しずつですが、無理やり伸ばされてしまいます。その結果、糸が切れ、元に戻った場合に包茎が悪化する可能性があります。
リスク8:包皮の切りすぎによる勃起不全・痛み
ペニスの皮を切りすぎてしまった場合です。手術時はもちろん勃起していませんので、勃起したペニス の長さを想定してデザインします。しかし勃起時のサイズは人によって違いますので、下記のイラストの様に切りすぎてしまうと手術後に皮が足りなくなり、うまく勃起出来なかったり、皮が突っ張って違和感や痛みを伴う事があります。
切りすぎた場合の修正はかなり難しいので、当然ですが包茎手術に慣れた先生にお願いしましょう。包茎手術に慣れた医師にとっては稀なリスクです。
【このリスクが起こりやすい手術方法】亀頭直下切開法、バックカット(陰茎根部切開)法
リスク9:包茎に戻る
手術方法によっては手術を行っても、包茎に戻るリスクがあります。このリスクは『切らない包茎手術』で発生しやすいリスクです。
【このリスクが起こりやすい手術方法】
糸と針で行う切らない包茎手術
ペニスは勃起など伸び縮みします。また性交渉(セックス)はかなりの摩擦が加わりますので、縫った糸は容易に(80〜90%)取れてしまいます。
ヒアルロン酸による切らない包茎手術
ヒアルロン酸は吸収されますので包茎に戻ってしまうリスクは非常に高いです。
リスク10:傷の感染
手術の傷に細菌が感染することで起こり得ます。通常、手術前に抗生物質の予防投与を行いますので可能性はかなり低い(100人に1人程度)です。ただバックカット法では陰毛が傷の周囲に存在する為に感染の可能性が少し上がります。陰毛には細菌が多く付着している為です。万が一、傷が感染すれば抗生物質を投与します。
当院では亀頭下環状切開法で行っています
この手術法は環状切開を改良した方法で、『ツートンカラーや手術後の腫れを最小限で抑え、手術後、早期に自然な仕上がりを実現できる方法』です。
まず、なるべくツートンカラーになりにくい様に切除範囲をデザインします。次に、ペニスの皮には皮下組織という腫れの原因となる組織が殆どない場所がありますので、その場所の近くで手術をする為、腫れも最小限で済みますし、性感を落とさずに済むのです。
カズ博多クリニックではこの『亀頭下環状切開法』を採用しています。通常、泌尿器科医は機能面は重視しますが、美容面は考えません。この方法は泌尿器科医が行う『環状切開法』に、形成外科医として美容面も重視した当院オリジナルの方法です。
2. 手術後のリスクも最小限に抑えましょう
これまで包茎手術のリスクをご紹介してきました。包茎手術を上記のリスクの低い手術方法で行なった後に大切なのは手術後の管理です。誤った管理方法を続けてしまうとせっかくの綺麗に手術したのに…ということにもなりかねません。
また手術後は気になる事があっても気軽に病院やクリニックに相談しにくく、自分なりの(間違った)術後管理を行ってしまう方も少なくありません。是非、『適切な術後管理』を行い手術後に起こりうるリスクを最小限に押さえましょう!
手術後の管理方法は下記記事にて詳しく記載していますので参考になれて下さい。
3. リスクが起きてしまった時の対処法
では実際にこれまで紹介した様なリスクが発生してしまった場合はどの様に対処すればいいのでしょうか。
3-1 まずは手術を受けた病院、クリニックに相談
実際に当院には他院で包茎手術を行った方が様々なトラブルを抱え来院されます。しかし、まずは手術を受けたクリニック、担当医師に相談しましょう。手術は執刀する医師によって手術方法が異なります。ですので、トラブルが起こった時にどこをどの様に手術しているのか、他の医師では分かりにくいのです。
3-2 それでも解決しない場合はセカンドオピニオンを
当院にご相談があった患者様にも、まずは手術を受けた病院、クリニックに相談する様にお伝えしていますが、
■ どうしてもそのクリニックに行きたくない
■ 手術をした包茎・美容クリニックに行っても『問題ない』と言われ対応してもらえなかった(包茎・美容クリニックに多い)
という方が多く、そういう方には当院で修正術を行っています。
上記の様に手術した病院・クリニックで対応してもらえない場合は他の医師にセカンドオピニオンを求めるのも良いかもしれません。
但し、本記事でご紹介したリスクが起こった場合、対応してもらえる泌尿器科は限られています。事前に手術後のアフターケアを含めた病院・クリニック選びをしましょう!
3-3 悲惨なトラブルも起きています
包茎専門美容クリニックで包茎手術を受けた後、縫合が上手くいかず尿道を傷つけてしまい、泌尿器科にて尿道を作り直した症例が報告されています
参考文献 渡辺頼勝:包茎専門美容外科クリニックにおける術後尿道欠損の1例:形成外科 Vol.58
本記事で、『尿道損傷』はリスクとしてご紹介していません。なぜなら、包茎手術で尿道を損傷することは通常考えられないからです。残念ながら、多くの包茎クリニック、美容クリニックでは尿道を含めた解剖の知識を持たない医師が手術を行なっておりこの様な悲惨なトラブルが起きてしまったと考えます。
4. 包茎手術で信頼できるクリニックの特徴
上記の様な悲惨なトラブルに巻き込まれない様、下記の特徴に該当するクリニックを選びましょう。
4-1 クリニックを選ぶ時に絶対にチェックしたい4つのポイント
医師が泌尿器科専門医である事
公的保険の適応となるのは真性包茎だけですが、包茎手術はどこの公的病院でも泌尿器科医が施行しています。泌尿器科医はペニスを含めた男性器の手術に慣れていますので泌尿器科、可能であれば泌尿器科専門医がオススメです。泌尿器科専門医は手術件数、学会発表、論文発表などの条件を満たした上で試験に合格しなければ与えられない資格であり、一定のレベルが保証される証だからです。
美容クリニック、包茎専門クリニックは泌尿器科医が少なく、手術に慣れていない科の出身の先生も多いので、遠慮せずに担当の先生に聞いてみましょう。
手術方法が傷跡の目立ちにくい環状切開法である事
今まで述べてきた様に包茎手術は正しい手術法選択が重要です。環状切開、亀頭下環状切開法を選びましょう。(注:通常の環状切開の場合は上記の様にどうしてもツートンカラーになりやすいです。傷跡が少しでも目立ちにくい工夫がなされているか担当の先生に相談しましょう)
ペニスへのヒアルロン酸注入が診療項目に有るか否か
多くの美容外科クリニック、包茎専門クリニックでは切らない包茎術を選ばなくても下記のような謳い文句でヒアルロン酸をはじめ異物をペニスに注入するように勧めます。
- 手術後のガーゼがズレない様、亀頭を大きくしておきましょう
- 包茎の方は亀頭が敏感なので、手術で露出した(ズルムケの)亀頭の痛みを和らげましょう
- 亀頭をヒアルロン酸などで大きくしておかないと包茎に戻るリスクがあります
- せっかくなので一緒にペニスを大きくしませんか
ヒアルロン酸による切らない包茎術の項目で記載した通りヒアルロン酸をはじめ異物をペニスに注入することはとてもリスクが高いです。ひどい場合にはペニスが腐ることもあるので、ペニスへのヒアルロン酸注射が診療項目に存在する場合、そのクリニックはお勧めできません。
手術に関してカウンセラーではなく、じっくり医師と相談できるクリニックである事
男性器治療のクリニックでは受診すると医師ではなくカウンセラーと呼ばれる男性が手術方法など説明して医師は2-3分程度の診察、というケースが多いです。ほとんどのカウンセラーは医療の資格などを持たない一般事務員です。包茎手術は大きな手術ではありませんが、上記で記載した様にリスクが有ります。ぜひ医師、できれば学会認定の専門医に相談できるクリニックを選びましょう!
なお国民生活センターへの相談事例でもこの点に関してはたびたび問題になっています。
5. 包茎治療はリスクの低い泌尿器科専門医へ
包茎治療は日帰り手術が可能な手術です。しかし近年、患者様のコンプレックスに漬け込み、この包茎治療をビジネスとして考える美容・包茎クリニックが多く存在します。
福岡のカズ博多クリニック(以下当院)はその様なクリニックのアンチテーゼになりたいという意思の元に産声をあげたクリニックです。泌尿器科医、形成外科医として手術歴10年以上、男性器の施術は5000例以上の経験を持つ院長が包茎手術を担当しています。
本記事でも記載した通り当院ではリスクが少ない亀頭下環状切開法で手術を行なっています。
また泌尿器科専門医による男性器クリニックは国内唯一です。通常の泌尿器科とは違い、スタッフも全て男性ですのでお気軽にご相談下さい。
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