『母方のお爺ちゃんがハゲてると遺伝するって聞いたけど本当なの?』
自分の髪の毛がフサフサであっても将来が心配になりますよね。
結論から言うと、薄毛は遺伝しますし、母方の祖父が薄毛であれば、薄毛になる可能性は75%です。しかし、遺伝したからといって絶対薄毛になるわけではありませんし、もし薄毛になったとしても、早い段階で治療を開始すれば90%以上の方が改善できる時代です。
大切なのは薄毛の遺伝について医学的に正しい情報を知り、きちんと対策を立てる事です。
そこで今回は京都大学病院に勤務時代、薄毛治療のお薬を研究してきた筆者が『薄毛は誰から、どのくらいの確率で遺伝するのか』、『遺伝したらどうなるのか』、『自分に薄毛が遺伝しているのか手軽に知る方法』そして『遺伝していた時の薄毛防止法』までわかりやすく解説します。
少しでもお悩みの方は、是非参考にして下さい。
目次
1. 薄毛の遺伝について
薄毛は遺伝します。
それが分かったら、次に気になるのは『自分に薄毛が遺伝するのか』ではないでしょうか。
本章ではその疑問を解決する為に、まずは薄毛が遺伝する仕組みから簡単にご説明します
1-1 薄毛が遺伝する仕組み
まずは下のイラストをご覧下さい。
生物の授業で習ったはずですが、人は染色体を持っています。
男性なら『XY』という染色体を、女性であれば『XX』という染色体を持っています。薄毛の遺伝子はこのX染色体にあることが分かっています。
という事は、あなたが男性であれば染色体は『XY』ですので、『X(イラストのピンク)染色体』は母親から、『Y(イラストの緑)』は父親から受け継いだことが分かりますので、薄毛の遺伝子があるとされる『X染色体』は母親譲りなのです。
もちろん薄毛遺伝子は他にもあるとされていますが、まだ研究段階ではっきりとした遺伝子はこの遺伝子だけです。
※参考文献 Hillmer AM Am J Hum Genet. 2005 Jul;77(1):140-8. Epub 2005 May 18.
つまり薄毛は母親側から遺伝します。
1-2 薄毛が遺伝する確率
では薄毛が遺伝する確率を見て行きましょう。イラストをご覧下さい。
薄毛が遺伝ケース①:母親側の祖父が薄毛の場合
この場合祖母に薄毛遺伝子があるかどうかも考慮しなければいけません。女性は薄毛遺伝子を持っていても薄毛にならない事も多いですので祖母が薄毛でなくても薄毛遺伝子を持っている可能性はあります。
複雑な確率論の計算なので省略しますが『母親側の祖父が薄毛の場合、あなたが薄毛遺伝子を持っている可能性は75%です。
50%としているサイトも多く見られますが、これには祖母に薄毛遺伝子があるかどうかが考慮されていません。
薄毛が遺伝ケース②:母親側の祖父も曽祖父も薄毛の場合
次が母親側の祖父も曽祖父も薄毛の場合です。このケースでも詳しい計算方法は省きますが『あなたが薄毛遺伝子を持っている可能性は87.5%です。
上記しましたが父親が薄毛でも遺伝する可能性はありますが、これといった医学的に根拠のある遺伝子は未だ見つかっていませんので今回の薄毛が遺伝する確率に父親の影響は含めていません。
2. 薄毛が遺伝しても絶対ハゲるわけではない
遺伝の確率をご覧頂いて、思ったより高いなあと思われた方もご安心下さい。薄毛が遺伝しても絶対ハゲるわけではありません。
病気を想像して頂ければ分かりやすいかもしれませんが、何の病気でも軽症から重症まで幅が有りますよね。薄毛の遺伝子にも薄毛に強く関係するものとそうでないものが存在します。
では薄毛遺伝子がどの様に薄毛に関連するのか知る為に、まずは薄毛になるメカニズムをご説明します。
男性の薄毛の原因で最も大きな原因はAGA(女性であればFAGA)です。
AGAはAndrogenetic Alopeciaの略で「男性型脱毛症」という病気です。薄毛が『病気』と聞いて、信じられないかもしれませんがAGAは医学的に『病気』に分類されていて、実に男性の薄毛の原因として90%以上を占めるのです。
※参考文献 佐藤ら Skin Surgery (0918-9688)16巻3号 Page126-131(2007.11)
そしてこのAGAの原因には『悪玉男性ホルモン』と『遺伝』の2つが存在します。
まずは悪玉男性ホルモンからご説明していきましょう。
AGAの大部分の原因を占めるのがこの『悪玉男性ホルモン』です。
下のイラストをご覧下さい。
髪の毛の正常なサイクル(イラストのピンクの矢印)が悪玉男性ホルモンの影響で短いサイクル(緑の矢印)に置き換わってしまい、髪の毛がしっかり成長する前に抜けてしまいます。
そしてこの悪玉男性ホルモンの『活性(活動レベル)』が遺伝によって決まるのです。
ですので、薄毛遺伝子の中にはこの『活性』が弱いものと強いものがあり、活性が『弱い』ものであれば『薄毛が遺伝してもハゲにくい』のです。
3. 自分に薄毛が遺伝してるか知る方法
自分に薄毛が遺伝しているか知るにはAGAクリニックでマイクロスコープを用いた確認が有用です。マイクロスコープとは頭皮に当てることで頭皮が拡大され頭皮環境はもちろん毛髪の状態を詳細に見ることができる機械です。AGA診療に慣れた医師であれば、マイクロスコープの所見で『薄毛が遺伝しているか』だけでなく『薄毛が発症しているか』もしくは『将来薄毛になりそうか』判定することができます。
AGA診療は病気ではない為保険は使えません。マイクロスコープでの診断は初診料に含まれることが多く約3000〜5000円です。
是非AGA専門の医師がいるクリニックを受診して見て下さい。
最近流行りの『遺伝子検査で薄毛遺伝子も診断できます』と謳っている検査キットの会社、AGAクリニックがありますが、実はこの検査に医学的根拠は有りません。この遺伝子検査のほとんどがCAGリピートと呼ばれるものを利用した検査です。しかし私が京都大学でAGAのお薬の研究をしていた時に出た論文で、このCAGリピートとAGAの発症リスクには関連がないと結論づけられています。
検査は数万円しますし、もったいないのでやめましょう。
※参考文献 Zhuo FL et al; Clin Exp Dermatol. 2012 Mar;37(2):104-11.
4. 遺伝以外の薄毛の原因
前章までで遺伝以外の薄毛の原因として悪玉男性ホルモンの影響をご説明しました。薄毛の大きな原因はこの2つですが、薄毛になる原因は他にもございます。
薄毛の『原因』が1つという人はほとんどいません。複数の原因が少しずつ関連していることがほとんどです。その他の原因に関しては対策方法も含め別記事に詳しく記載しています。
5. 薄毛を防止する方法
薄毛を防止し、髪の毛を増やす最も効果的な方法はAGA治療です。
上記の様に薄毛の原因が一つという方は少ないので、他の原因にも対処していくことは必要です。
しかし、他の方法を試したとしても、悪玉男性ホルモンをブロックしない限り、『目に見える薄毛の改善』を得ることはできない、というぐらい薄毛に関して大きな要因なのです。
このAGAは近年、上記の様なメカニズムが解明され、毎日1回お薬を飲むだけで、90%以上の方で改善を認めるようになりました。
お薬で悪玉男性ホルモンをブロックする事で『薄毛の進行』を防ぎ、更に『発毛』を促します。
副作用のリスクも低く、安全なお薬ですので薄毛に悩んでいる方は是非検討して見て下さい。
実際のAGA治療の流れ
STEP1:お問い合わせ・受診予約
STEP2:受診・問診表への記入
STEP3:医師(院長)による診察
問診+肉眼、マイクロスコープにて頭部全体を診察し患者様に合った適切な治療をご提案いたします。
STEP4:お会計
費用はお薬にもよりますが3〜5万円/月、病気ではないので保険が効きません。
STEP5:処方・ご帰宅
6. 少しでも気になったら専門医へ
AGA治療では90%以上の方がお薬だけで改善することができます。しかしAGAクリニックの中には、お薬に加え、医学的に根拠の低いメソセラピー(実際にガイドラインでも推奨されていません)などを組み合わせて高額請求するクリニックも存在します。実際にはメソセラピーは効果がないもののお薬が効くので一緒に始めると患者さんは何が効いたか分からずに全治療をずっと続けなければならなくなります。『薄毛治療 1ヶ月〇千円!』と安さをウリにしているクリニックは、来院すると様々な治療と掛け合わせて高額請求につなげる事があるので注意しましょう。
福岡のカズ博多クリニックはそんなクリニックのアンチテーゼとなるべく開院したクリニックです。院長が京都大学附属病院時代にAGAのキードラッグであるザガーロの研究をしており、その研究成果と日本皮膚科学会のガイドラインを遵守した治療を行なっています。
また当院は完全予約制のプライベートクリニックです。是非お気軽にご相談下さい。
コメント