『前から気になってはいたけど、抜け毛増えたなあ』
『シャンプーの時もだし、朝起きた時の枕も抜け毛がすごい』
そんな風に思っていませんか?
抜け毛はある程度まとまった量にならないと実感しない為、『増えた』と思った時には抜け毛・薄毛がある程度進行している可能性があります。
人の抜け毛は1日25〜59本です、と言われても自分がどのくらい抜けているかなんてわかりませんよね。
※参考文献 Randall et al; Br J Dermatol.1991;124:146-51
そこで本記事では京都大学病院で薄毛治療のお薬を研究してきた筆者が
- あなたの抜け毛の量は人に比べてどうなのか
- 放っておいて良い抜け毛なのか
- 抜け毛進行レベル別の原因と対処法
など、どこよりも分かりやすく丁寧に解説致します。少しでも悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみて下さい!
目次
1. 抜け毛の量 〜自分の抜け毛か本当に多いのかチェック〜
自分の抜け毛が本当に多いのか、それはシャンプーした時に抜けた髪の毛の本数でおおよそ見当がつきます。
では簡単にチェックする手順を説明します。
STEP1 シャンプーの時に抜け毛の本数をチェック
排水溝から抜け毛が流れて正しく本数が測れない場合はその時だけネットを使うなどして測ってみて下さい。
STEP2 その本数から抜け毛が多いのかチェック
1日の抜け毛の量は季節によって異なります。
1月〜2月 38〜48本
3月〜7月 25〜36本
8月〜11月 50〜65本
12月 39本
であれば正常です。
シャンプーでは1日の抜け毛の半分が抜けると言われていますので
1月〜2月 24本以上
3月〜7月 18本以上
8月〜11月 33本以上
12月 19本以上
であれば『抜け毛が多い』と考えて下さい。
※参考文献 Randall et al; Br J Dermatol.1991;124:146-51
しかしこの目安はあくまで薄毛の進行が初期の方向けです。薄毛が進行して全体の毛量が少ない方は、より少ない抜け毛でも抜け毛が多いことになりますので注意が必要です。
2. 抜け毛の質 〜マズイ抜け毛か毛根をチェックすれば分かります〜
抜け毛の量が分かったら次は抜け毛の質についてです。
イラストをご覧下さい。
マズイ抜け毛かどうかは毛根とその色を見れば分かります。
正常な抜け毛は毛根が丸く膨らんでいます。そして正常な頭皮では血の巡りが良いので、栄養が行き届き、毛根のさらに根元が白くなっています。
コレは髪の毛に栄養がよく行き届いている証拠です。
次からが『マズイ抜け毛』です。
マズイ抜け毛①:毛根が細い
とってもマズイ抜け毛の特徴が『毛根が細い』、『毛根がない』というもので、抜け毛が進行している証拠です。
イラストの様に髪の毛にはヘアサイクル(毛周期:髪の毛が生えて抜ける)という循環があります。
マズイ抜け毛の方=薄毛が進行している方ではこのヘアサイクルが短くなり髪の毛がしっかり成長する前に抜けてしまいます。
正常(上のイラストのピンクの矢印)であれば『髪の毛が生えて抜ける』まで約2〜6年かかりますが悪玉男性ホルモンの影響で短いサイクル(緑の矢印)に置き換わってしまう事が原因です。
髪の毛がしっかり成長する前に抜ける=毛根もしっかり成長していない段階で抜ける
となり、『毛根が細い』、『毛根がない』となってしまうのです。
マズイ抜け毛②:毛根の上まで白い
次にマズイのが毛根の上まで白い物質が髪の毛の周りに付着しているタイプです。
この白いモノが毛根だけの場合は『もうこんしょう』と呼ばれる物質で正常です。しかし毛根の上まで白い物質付着している場合、頭皮から分泌されたアブラです。
このアブラは『皮脂』と呼ばれ誰でも分泌されていますが、抜け毛にまで付着している場合はマズイ抜け毛である可能性が高いです。皮脂が過剰に分泌されていたり、頭皮の状態が悪化していることを意味します。
マズイ抜け毛③:毛根が真っ黒
そして最後に毛根が真っ黒な抜け毛です。
自然に抜けた髪の毛は毛根が少し白っぽくなっていますが、毛根全体が真っ黒である場合マズイ抜け毛であることが多いです。
髪の毛に栄養が行き届いている場合毛根全体が真っ黒になることはありません。しかし頭皮の血の巡りが悪い場合、栄養が行き届かずに真っ黒になってしまいます。
3. 抜け毛・薄毛の6つの原因
抜け毛の量、毛根の状態から『マズイなあ』と思った方は、なぜ抜け毛が多くなっているのか、その原因を探って行きましょう。
実は抜け毛の原因が1つという方は滅多にいません。いくつかの原因が関連して抜け毛、薄毛の状態になっていることがほとんどです。
では抜け毛の多い・薄毛の原因として多いものから順に見て行きましょう。
3-1 AGA (女性ではFAGA)
まずは男性の方の場合からご説明します。
3-1-1 AGA
AGAはAndrogenetic Alopeciaの略で「男性型脱毛症」という病気です。抜け毛・薄毛が『病気』と聞いて、信じられないかもしれませんがAGAは医学的に『病気』に分類されていて、実に男性の抜け毛・薄毛の原因として90%以上を占めます。
※参考文献 佐藤ら Skin Surgery (0918-9688)16巻3号 Page126-131(2007.11)
そしてそのAGAの原因として『悪玉男性ホルモン』と『遺伝』の2つが存在します。
まずは悪玉男性ホルモンからご説明していきましょう。
■ 悪玉男性ホルモン
AGAの大部分を閉めるのがこの『悪玉男性ホルモン』です。
下のイラストをご覧下さい。
髪の毛の正常なサイクル(イラストのピンクの矢印)が悪玉男性ホルモンの影響で短いサイクル(緑の矢印)に置き換わってしまい、髪の毛がしっかり成長する前に抜けてしまいます。
上記の様に抜け毛の原因が一つという方は少ないので、他の原因にも対処していくことは必要です。
しかし、他の方法を試したとしても、この悪玉男性ホルモンをブロックしない限り、『目に見える抜け毛・薄毛の改善』を得ることはできないのです。
■ 遺伝
続いてが遺伝です。良く抜け毛・薄毛は遺伝すると言われますが、それは上記のAGAの原因となる『悪玉男性ホルモン』の活性(活動レベル)が遺伝するのです。ですので、この活性が高い遺伝子が受け継がれた場合、抜け毛・薄毛になりやすくなるのです。
また遺伝はよくお母さん側から受け継ぐと言われています。下のイラストをご覧下さい。
生物の授業で習ったはずですが、人は染色体を持っています。
男性なら『XY』を、女性であれば『XX』を持っています。抜け毛・薄毛の遺伝子はこのX染色体にあることが分かっています。
という事は、あなたが男性であれば染色体は『XY』ですので、『X(イラストのピンク)染色体』は母親から、『Y(イラストの緑)』は父親から受け継いだことが分かりますので抜け毛・薄毛の遺伝子があるとされる『X染色体』は母親譲りなのです。
もちろん抜け毛・薄毛遺伝子は他にもあるとされていますが、まだ研究段階です。
※参考文献 Hillmer AM Am J Hum Genet. 2005 Jul;77(1):140-8. Epub 2005 May 18.
【AGAへの対策】
このAGAは近年、上記の様なメカニズムが解明され、毎日1回お薬を飲むだけで、90%以上の方で改善を認めるようになりました。
お薬で悪玉男性ホルモンをブロックする事で『抜け毛・薄毛の進行』を防ぎ、更に『発毛』を促します。
副作用のリスクも低く、安全なお薬ですので1、2章で『マズイ抜け毛』であることを実感された方は是非検討してみて下さい。
実際のAGA治療の流れ
STEP1:お問い合わせ・受診予約
STEP2:受診・問診表への記入
STEP3:医師(院長)による診察
問診+肉眼、マイクロスコープにて頭部全体を診察し患者様に合った適切な治療をご提案いたします。
STEP4:お会計
費用はお薬にもよりますが3〜5万円/月、病気ではないので保険が効きません。
STEP5:処方・ご帰宅
3-1-2 FAGA
男性に比べると少ないですが、抜け毛に悩む女性も多くいらっしゃいます。男性同様、女性で薄毛に悩む方の多くがホルモンバランスの乱れが原因です。加齢によって女性の髪の毛の成長に不可欠な女性ホルモン(エストロゲン)が低下してしまいます。
【FAGAへの対策】
男性同様、抜け毛の原因が1つという方は少ないので、他の原因にも対処していくことは必要です。しかし、他の方法を試したとしても、このFAGAを治療しない限り『目に見える抜け毛・薄毛の改善』を得ることはできないのです。
FAGA(女性型脱毛症)の方もお薬だけで7割以上の方が薄毛の効果改善を実感できます。
『髪は女性のいのち』とも言われます。FAGAの治療は『手軽』かつ『効果的』です。副作用のリスクも低く安全なお薬ですので是非検討しましょう!
3-2 頭皮の環境悪化
抜け毛が増える原因に、髪の毛が『育ちやすい環境』に整っていないこと、があります。髪の毛が『育ちやすい環境』に整っていないと、髪の毛は育つ前に抜けてしまいます。
ではそういった、頭皮の環境が悪化する原因を一つ一つ見ていきましょう。
① 偏った食生活・食事制限ダイエット
現代人の食生活は頭皮環境に悪影響なものばかりです。代表的なものにスナック菓子、ファストフード、レトルト食品があります。
これらの食べ物は髪の毛の合成に欠かせない『亜鉛』をブロックしてしまいます。亜鉛は体内で合成する事は出来ないのでせっかく食事やサプリで摂取したとしてもこういった食事を摂取することで亜鉛不足から頭皮環境の悪化は免れず、抜け毛に繋がってしまいます。
また食事制限ダイエットも抜け毛が多い原因になります。
髪の毛はタンパク質で構成されていますが、髪の毛が作られる過程でビタミン、ミネラルなど様々な栄養素が必要になります。食事制限ダイエットによってこういった栄養素が不足することで髪の毛がしっかりと育たずに抜け毛の原因となります。
この様に、偏った食生活は抜け毛の原因になります。
【偏った食生活・食事制限ダイエットへの対策】
対策法は食生活を見直しバランスの良い食生活を心掛けることです。サプリメントで補うことも有用ではありますが、サプリには副作用もありますので、なるべく食事で摂取できる様、心がけましょう。
② 季節性
季節によって抜け毛の量は変わります。1日当たりにすると抜け毛が少ない時期で1日25本、多い時期で65本程度です。理由としては色々と言われていますが紫外線の影響という説が有力です。
紫外線によって頭皮(の毛母細胞)がダメージを受け、頭皮の炎症や赤みなどの頭皮トラブルを引き起こすことで抜け毛が増えます。また頭皮での炎症は『軽度のヤケド』でもありますので、髪の毛への栄養が十分行き届かなくなり、髪の毛が太く成長できず薄毛に繋がってしまいます。
この紫外線による抜け毛、薄毛は最も紫外線を浴びる夏ではなく、その影響は少し遅れて、秋頃に出やすいのが特徴です。
【紫外線への対策】
抜け毛が気になる方は帽子などで頭皮のUVケアをお勧めします。しかし帽子の被りすぎで、汗を多くかいてしまうことも頭皮環境の悪化につながりますので気をつけましょう。
③ シャンプーが悪い
シャンプーの中には、髪の毛の成長を邪魔する皮脂(頭皮から分泌されるアブラ)だけでなく、バリアとなり紫外線などから頭皮を守ってくれる皮脂も洗い流してしまうシャンプーがあります。
この様なシャンプーを使用すると結果的に紫外線などの、外部からの刺激で髪の毛がダメージを受け抜け毛が増加し薄毛の原因になります。
【対策方法:頭皮環境に良いシャンプーの選び方】
抜け毛が気になる方に良いシャンプーはアミノ酸系のシャンプーで、主成分にラウロイルグルタミン酸Na、ラウロイルメチルアラニンNa、ココイルグルタミン酸Naなどが含まれています。
他のシャンプーに比べ洗浄力がマイルドですので適切に不要な皮脂を洗い流してくれ、バリアとなり紫外線などから頭皮を守ってくれる皮脂は残してくれます。
値段が高いのがネックですが、これが薄毛の方にオススメのシャンプーになります。
以下に具体的なアミノ酸系シャンプーを3つご紹介いたしますので参考にされて下さい。
- Pure NATURAL(ピュアナチュラル) シャンプー 500ml ¥ 906(記事掲載時)
このシャンプーはアミノ酸系の成分が2種類配合されており、合成香料が含まれていないので、男性が使っても自然な香りです。お値段も手頃なのでアミノ酸シャンプー入門にはちょうど良いかと思います。しっとりタイプとサラサラタイプの2種類があります。
- BOTANIST ボタニカルシャンプー 490ml ¥ 1512(記事掲載時)
有名なシャンプーですのでパッケージはご覧になったことがあるかもしれません。このシャンプーはアミノ酸系の成分が4種類配合され、天然成分90%以上で作られています。値段も少し高いのでアミノ酸シャンプー中級者向けです。保湿力も優れていますが、すすぎ残しがあると保湿の成分であるグリセリンが頭皮に残り頭皮環境の悪化を招く為、3分程度のすすぎが必要です。
- tee-treeの森 アロマのやさしさ 500ml ¥ 2800(記事掲載時)
このシャンプーはアミノ酸系の成分が3種類配合されており、その他の成分もマイルドな洗浄成分で構成されているので赤ちゃんも一緒に使って頂いて問題ありません。香料など含め全て無添加で作られており自然派思考のシャンプーです。
3-3 喫煙
喫煙で抜け毛が多くなる原因はその成分であるニコチンに有ります。
3-1-1 ニコチンによる血行不良
喫煙するとニコチンの影響で血管が細くなります。そうすると細くなった血管では栄養素も行き届きにくくなる為、髪の毛の成長もままならず、抜け毛が増えてしまいます。
3-1-2 ニコチンによるビタミンの消費
カラダはニコチンによって合成される活性酸素(体にとって害になる)をなんとか減らそうとします。この活性酸素を減らす代償としてビタミンを多く消費します。
ビタミンは髪の毛の合成に必要です。
例えば
ビタミンBは髪の細胞分裂を促します。
ビタミンCは髪の毛に栄養を送る毛細血管を作ります。
ビタミンEはその栄養を送りやすくする効果があります。
このようなビタミンが、ニコチンによって消費される為に抜け毛の原因となります。
3-1-3 ニコチンの蓄積
ニコチンは肝臓で分解されますが、度重なる喫煙で肝臓は疲れ、ニコチンを分解する能力が落ちてしまいます。そうするとニコチンは体内でどんどん溜まってしまいますので髪の毛への影響も大きくなってしまうのです。また喫煙する方はお酒も多く飲む方が多く、アルコールも肝臓で分解される為に、より早い段階で肝臓にダメージをきたしやすくなってしまいます。
3-1-4 ニコチン以外の影響
タバコに含まれるアセトアルデヒドは抜け毛・薄毛の原因である悪玉男性ホルモンを増やすと言われています。この悪玉男性ホルモンはAGA(男性型脱毛症)の直接の原因になりますので注意が必要です。
3-4 過度の飲酒
適度な飲酒は問題ありませんが、飲酒の量が増えてくると抜け毛に繋がってしまいます。
なぜかというと、アルコールは肝臓で分解されますがその際に髪の毛を作るために必要なアミノ酸を、使用するため髪の毛の成長がおろそかになる為です。またアルコールの影響で胃や腸でビタミンなどの(これも髪の毛の合成に必須)吸収が低下する為、過度な飲酒は抜け毛を増やすのです。
またアルコールは肝臓で分解されると『アセトアルデヒド』になります。喫煙の項目でも記載した通り、アセトアルデヒドは抜け毛。薄毛の原因である悪玉男性ホルモンを増やす為、AGA(男性型脱毛症)の直接の原因になりますので注意が必要です。
3-5 ストレス・睡眠不足・運動不足
人間、ストレスを感じると交換神経の影響で血管が細くなります。そうすると細くなった血管では栄養も行き届きにくくなる為、髪の毛の成長もままならず、抜け毛が増えてしまいます。
また睡眠中には髪の毛の成長を促すホルモンが分泌されますので、睡眠不足では髪の毛が成長せず、抜け毛が増えてしまいます。ストレスを感じると睡眠不足にもなることが多いので相乗効果で抜け毛が悪化することがあります。
また運動不足も筋力の低下から血液を送る力が落ち栄養も行き届きにくくなる為、抜け毛が増えてしまいます。対策としては有酸素運動がオススメです。有酸素運動では血液の流れが改善され髪の毛に栄養が行き渡りやすくなります。また適度な運動はストレス発散の効果もあります。散歩で少し出かけるだけでも違いますので試してみて下さい。
3-5 抜け毛の原因となる薬や病気
がん、うつ病、高脂血症、高血圧のお薬には抜け毛の原因となるものがあります。また甲状腺の病気や梅毒、膠原病など抜け毛の原因となる病気もあります。
薬を飲みだして抜け毛・薄毛が急に進行した場合、抜け毛・薄毛と他の症状が一緒に出てきたという場合には病院で相談しましょう。お薬の場合は処方した主治医に、後者の方は皮膚科もしくはAGAを診ている医師に相談するといいと思います。
抜け毛・薄毛治療は、『早めの治療』が『安価』で『お手軽』に『効果的』です。進行してしまうと自毛植毛など高価でリスクの高い治療が必要になります。
抜け毛・薄毛は痛みなどの症状が無いため知らないうちに始まり、進行します。
『自分は大丈夫』と思わずに、少しでも気になったら専門医に気軽に相談して見ましょう。なお別記事に抜け毛の進行レベルと最適な改善方法をご紹介しています。是非あなたの抜け毛・薄毛進行レベルが今どのくらいにあるのか『セルフチェック』して頂き、それぞれに合った改善方法を見つけて下さい。
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